社会学評論
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なぜ「心の闇」は語られたのか
少年犯罪報道に見る「心」の理解のアノミー
赤羽 由起夫
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キーワード: 少年犯罪, 心の闇, アノミー
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2013 年 64 巻 1 号 p. 37-54

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抄録

本稿の目的は, なぜ少年犯罪において「心の闇」が語られるようになったのかを明らかにすることである.
「心の闇」は, 1990年代後半から2000年代中頃にかけて社会問題化した戦後「第4の波」と呼ばれる少年犯罪を語るうえで重要なキーワードの1つとなった言葉である. この「心の闇」の語られ方には, それが, 一方で理解すべきものとして語られながら, 他方でどれだけ努力しても理解できないものとしても語られたという特徴がある. つまり, 「心の闇」は, 「心」を理解したいという欲望の充たされなさによって特徴づけられているものであり, ここからは, エミール・デュルケムが『自殺論』で論じたアノミーの存在を指摘することができるのである.
そこで, 本稿では, 「心の闇」という言葉がどのような社会状況において人々に受容されるのかについて, デュルケムのアノミー論を援用しながら知識社会学的に考察する. 考察を進めるうえでの参考資料としては, 新聞と週刊誌の少年犯罪報道で語られた「心の闇」を用いる.
本稿では, 以下の手順で考察を進めていく. 第1に, デュルケムのアノミー論について概説し, 「心の闇」とアノミーの関係についての仮説を提示する. 第2に, 少年犯罪報道において, どのようにして「心の闇」が語られていたのかを確認する. 第3に, どのようにして「心の闇」がアノミー的な欲望の対象となったのかについて考察する.

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© 2013 日本社会学会
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