社会学評論
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中国農村にみる共同性と村の公
山東省X村における農村都市化を事例として
閻 美芳
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2013 年 64 巻 1 号 p. 55-72

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抄録
本稿は, 農村都市化政策のもと, 村の移転を迫られた中国山東省X村の事例を分析することを通じて, 村人相互の間に立ち現れた共同性の作動するプロセスを明らかにし, 中国における村の自治の可能性について考察することを目的としている.
これまでの中国村落に関する諸研究では, 日本の村との比較を念頭に置きつつ, 中国の村には村を基盤とする共同体 (共同労働組織を念頭においた共同性) が存在しないとする見解や, 共同性が見られる場合であっても, それは「差序格局」に基づいた「私」や「個」の輻輳として理解される場合が多かった.
本稿で扱った事例では, 村の消滅を目の前にした村人たちが, 利害が錯綜するなか, 私利を抑えてまで「村の公」に基づく共同性を高めていった. そうしたことが可能になったのは, 村の消滅に危機感を抱いた人びとの組織的な働きかけによって, 一人ひとりが村の一構成員であるというメンバーシップの意識が高まり, さらにこのような働きかけ自体が私利に還元できない「村の公」に基づくものであることを, 村人相互が認識していたからであった.
このように中国農村における共同性は, 村の枠組みが動揺するなどの非常時には, 平常時とは異なる構成原理を示すことが明らかになった. 農村都市化など大型プロジェクトが矢継ぎ早に実施されている中国の農村地域においては, 村の危機が意識され, 平常時とは異なる村の自治が行われる可能性が高いと考えられる.
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© 2013 日本社会学会
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