社会学評論
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特集号・日本社会と国際移民――受入れ論争30年後の現実
外国人技能実習制度の利用の地域差とその要因の分析
水産加工業の事例
眞住 優助
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2018 年 68 巻 4 号 p. 479-495

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抄録

日本の外国人技能実習制度は創設以来, 事実上のゲストワーカー制度として, 人手不足にある企業や産業に労働力を提供している. 技能実習生の雇用に関する先行研究の多くは, この制度を積極的に利用する地域産業に焦点を当て, 技能実習生の導入経緯や就労実態を明らかにする. しかし一方, この制度の利用に地域差はあるのかという問いや, その差を生み出す要因は何かという問いは, これまでほとんど検討されてこなかった. 技能実習生に対する労働需要を形成する要因の十分な理解を目指し, 本稿では水産加工業を例にこれらの問いを考察する. 本稿の分析は次のことを明らかにする. 第1に, 2013年漁業センサスを用いた分析によると, 技能実習生の導入の程度には大きな地域差がある. 第2に, 近畿地方のA町で水産加工業経営者らに行ったインタビュー調査によれば, 技能実習生の導入を抑止するメカニズムとして2つの相互関連する要因がある. (1) 限定的かつ不安定な操業を行う企業は柔軟性ある労働力として地元の女性パート従業員を選好しており, (2) 他の就労機会が限られていること, また生産の性質上, 経営者が従業員の勤務上の要求に譲歩しやすいことが, 地元労働者の確保を可能にしている. これらの結果は, 職種の特性に加えて, 生産活動の形態が技能実習生に対する需要を形成する要因であることを示す. 少子高齢化時代の技能実習制度と地域産業の存続に関する暗意もまた論じる.

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© 2018 日本社会学会
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