社会学評論
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P. L. バーガーによる社会学の意義論
「科学と倫理の問題」という視角から
池田 直樹
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2018 年 69 巻 1 号 p. 56-71

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抄録

本稿はP. L. バーガーの社会学論, とりわけ社会学のメタレベルにおける意義に関する彼の議論を取り上げ考察する. バーガーが社会学論を展開した1960年代以降のアメリカにおいては, ‹社会学と政治›の関係をめぐって盛んにこの種の社会学論が論じられていた. バーガーももちろんこういった状況を自覚しながらそれに取り組んでいた. だが同時に彼においては‹社会学と信仰›というもう1つの問題系列も存在した. 時系列的にはこちらの系列に‹社会学と政治›問題が重ねられてくる.

これを踏まえて本稿ではバーガーの社会学論を‹社会学と信仰›, ‹社会学と政治›という2つの問題系列の交点において捉える. 本稿はバーガー自身の言葉を借りてこの問題を, 「科学と倫理の問題」として考える. それによって, 従来はともすればバーガーが保守化したのかどうかということのみが焦点化されてきた, 彼における‹社会学と政治›問題に異なる光を当てることができる. それはつまり彼の社会学を‹社会学・政治・宗教›というより包括的な問題連関において捉え直すということである.

こうした問題設定によってわれわれは, バーガーの思想全体への概略的見通しを得ることができるだろう. さらに上記の枠組みにおいて彼を捉え直すことは, 意味概念をはじめとする彼の社会学説の再検討のためだけでなく, アメリカ社会学全体の思想的性格を問うための手がかりの1つとなるとも思われる.

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© 2018 日本社会学会
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