2018 年 69 巻 2 号 p. 217-228
「参照基準 社会学分野」をめぐる論点を整理し, その評価・点検・活用としての「メンテナンス」の必要性と意義について述べる. 参照基準の本来的な機能は学士教育の質保証であるが, それ以外にもさまざまな機能がある. それらは, ①グローバル化への対応, ②学問としての存在証明, ③教育現場の孤立化への対応, などである. 社会学分野の参照基準の独自性は, 「分野に固有の能力」よりも, 「ジェネリックスキル」の内容にあらわれている. また, 社会学についての定義のコンセンサスがなくとも研究者集団の一致が成立するところに社会学の学問的性格の特色がある. そして, 対立する概念間の関係をつなごうとする思考法にも社会学の特色がある. 一般的な学問観や科学観からみてこのような特色をもつ社会学にとっては, 一般的な学問観や科学観のもとで形成されてきた「参照基準」の枠組みをつねに見直し, メンテナンスをつづける必要がある. そのための視点として「比較」と「反省」が考えられる.