社会学評論
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公募特集「『戦争と社会』をめぐる新潮流」
日本における軍事社会学の受容
― 一つの「戦争社会学」史の試み―
清水 亮
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2021 年 72 巻 3 号 p. 241-257

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抄録

冷戦期にアメリカで確立した軍事社会学は同時代の軍隊・軍人・民軍関係などを中心的主題とし,軍事組織への積極的な社会調査を実行し,西側諸国を中心に国際的に普及した.これに対して日本では軍事社会学は長らく輸入されず,総力戦の社会的影響や経験・記憶の探究を中心に近年「戦争社会学」というかたちで学際的な研究が集積しつつある.しかし,日本にも社会学の軍隊研究は存在し,軍事社会学を参照した研究者も皆無ではない.本論の目的は,軍事社会学を参照した社会学者による軍隊研究の検討を通して,国際的に普及している軍事社会学と,日本社会学の軍隊研究との位置関係ならびに,ありえた接続可能性を明らかにすることにある.まずアメリカにおける軍事社会学の確立と各国における受容状況,日本の社会科学の隣接分野における軍事社会学との接点について検討した.そして冷戦期日本社会学における軍事社会学の参照状況として,従来から注目されてきた文化論的な戦争研究に加え,産業社会学からの組織・職業論の理論枠組みへの関心,ならびに教育社会学のエリート論からの実証研究の試みを明らかにした.それらは相互参照がなく孤立していた.しかし,軍事社会学の枠組みの直輸入でも,狭義の政軍関係論的展開でもなく,日本社会学との接続および戦後日本特有の実証的研究対象の発見によって,軍隊と社会の関係性に関するユニークな認識を生産しえたものだった.

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© 2021 日本社会学会
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