社会学評論
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出産・育児期における女性就業とその学歴差の長期趨勢
―雇用労働力化に着目して―
麦山 亮太
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2022 年 73 巻 2 号 p. 86-102

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抄録

出産・育児期の女性の就業はどのように変化してきたのか.その変化は階層差を伴って進行してきたのか.これらは,ジェンダー不平等,ならびに女性内・世帯間の階層化の実態を明らかにするうえで重要な問題である.本稿では,高学歴化と並行して生じた自営・家族従業セクターの縮小と非正規雇用セクターの拡大,そして正規雇用セクターの安定的な推移という労働市場の構成変化に着目して,出産・育児期の女性就業の趨勢,ならびにその学歴差を再検討する.1985-2015年SSM調査を用いて,1970-2009年に第1子を出産した女性の出産2年前から6年後までの就業経歴データを構築し,出産年による比較分析を行った.分析の結果は以下の通りである.全体の就業率は微増しているが,その内実をみると自営家族従業での就業率の低下と非正規雇用での就業率の上昇が相伴って進行し,正規雇用での就業率にはほとんど変化がなかった.出産数年後の就業率は上昇したが,その多くは非正規雇用が増えたことによる.学歴別にみると,とくに短大卒層の就業率が大きく増加し,専門卒・短大卒・大卒層の就業率は同程度に至った.ただし専門・短大層の就業率増加の多くは非正規雇用によるもので,大卒層の非正規雇用の増加は緩やかである.高卒層の就業率はほとんど上昇していない.分析結果は,高卒とそれより高い学歴層との間に就業率の差が生じる格好で階層化が進みつつあることを示す.

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