2022 年 78 巻 6 号 p. II_237-II_250
本研究では,トリジェネレーションを含む木質バイオマスの利活用システムとワーケーション拠点施設の連携による事業性および地域経済への波及効果を推計した.本推計では,燃料の種類・ガス化方式・エネルギー回収形態が異なる3つのシステム(500kW規模未満)に組み合わせて,熱供給先としてワーケーション拠点施設の併設を想定した比較ケースを設定した.分析の結果,事業性の評価では,熱電併給システム(Case1-a,Case1-b)が内部収益率:10%以上で,投資回収年数:10年以下であり,トリジェネレーションシステム(Case2-a)よりも有効であることが明らかとなった.地域経済への波及効果では,Case1-bがもっとも大きいことが示された.さらに,条件によってはCase2-aがもっとも大きくなることを確認した.一方,地域経済への波及効果を含めた内部収益率ではCase1-aが19.9%ともっとも高いことが示された.また,比較ケースごとの地域キャッシュフローを把握し,事業の構造を把握した.さらに,本検討が抱えるデータの制約上の課題や改善点を示すとともに対応の方向性を示した.