社会学評論
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一斉授業における熟議の構成技法
―「考え,議論する道徳」授業の定式化実践を事例に―
森 一平
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2023 年 74 巻 2 号 p. 280-297

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抄録

本稿の目的は,「考え,議論する道徳」の授業をエスノメソドロジー・会話分析の立場から相互行為分析することにより,一斉授業で熟議を実現するための技法を一部明らかにすることである.

対象を熟議の核となる「対立意見の突き合わせ」場面に絞り分析した結果,以下の技法群が明らかになった.

第1に,児童の意見を定式化したあとに「発問タグ」を付加する「定式化+ QT」というフィードバック形式が,次の意見を「定式化された意見についての意見」に制限することを可能にする.

第2に,「X に対してどうか?」などの「対論喚起型 QT」により,その定式化された意見についての意見をさらに「対立意見」へと制限することができる.

第3に,「“つぶやき” への言及」もまた,かつより強力な意見の制限を可能にする.すなわち,次の意見をつぶやきの内容へと制限する.

第4に,次の意見を制限するための重要な資源である “つぶやき” は,「定式化+ QT」のいずれか,または両方の要素を「挑発」的に組み立てることによって引き出すことができる.

第5に,「定式化+ QT」の定式化パートを「融合」や「累積」のかたちで組織化することにより,引き出された対立意見を学級規模のより大きな対立図式に位置づけることができる.

以上の知見は,授業における定式化の新たな運用技法を明らかにしたものであり,また学校教育で熟議を実現するための実践内在的な方法知を提供するものである.

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© 2023 日本社会学会
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