社会学評論
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構造主義の認識モデル
レヴイ=ストロースの場合
上野 千鶴子
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1975 年 26 巻 2 号 p. 2-17

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抄録
レヴイ=ストロースの構造主義は、一九五八年『構造人類学』に見る公認の教義から、その客観的な構造を剔抉されなくてはならない。私見では、彼のアプローチは、階梯モデル、同型説、システム論的思考を特徴とする、合理主義的理解の方法の一典型であり、この観点からは「メタ=ストラクチャー」は、当該の事象を、より一般的・整合的な構造のうちに置換する上位モデルと解される。だとすれば、メタ=ストラクチャーを無意識の実在に等置する先験主義からも、これに発達を拒否する無時間モデルからも、私たちは免れることができる。彼自身及び彼の祖述家達の、方法をめぐる様々な錯綜した議論よりも、彼自身の構造分析の実際が、何よりも雄弁にそれを実証している
すなわち、メタ=ストラクチャーは、文字通り「系の系」として上位構造なのであり、理解とは、この構造を構成する手続きそのものなのである。これが、認識の発達モデルを提供するピアジェの構造主義が主張することであり、同時に、構造主義的思潮を、西欧合理主義の伝統の最も多産な果実とする方途である。
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