社会学評論
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直系制家族における核分離
家族周期論からみた役割構造を中心に
山村 マサエ
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1975 年 26 巻 2 号 p. 18-35

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抄録
本稿の目的は、直系制家族における親夫婦と子夫婦間の関係のあり方を明らかにすることにある。この課題は、我々に直系制家族の内部構造の理解を促し、さらに、直系制家族の変化の方向を示唆してくれるであろう、と考えられる。本稿では、分析の単位を家族的単位としての核家族に求め、その分離を検討する。
現代日本の家族は直系制家族から夫婦制家族への過渡期、あるいは両者が併存する状態にあるといわれている。そこで、直系制家族において、核分離の傾向が夫婦制家族への転換を孕む徴候としてあるのか否か、という問題を検討する必要がある。本稿で筆者は、このような問題に接近する手がかりを、集団的役割と関係的役割の二側面に求め、直系制家族の変化がいかなる家族周期段階の、いかなる内部の生活領域において生じ、親夫婦と子夫婦がいかなる関係をもっているか、に焦点をおいた分析を試みる。
本稿で用いるデータは、山梨県東山梨郡勝沼町において、三回 (一九六六年、一九七二年、一九七三年) にわたって実施した調査から得たものである。分析の方法は横断分析法と反覆面接法によっている。
結論的に言えば、直系制家族は限られた生活領域、家族周期段階において、分離の傾向を示しつつある。しかし、親世代の死亡を契機に、家族の内部構造が子世代に再編成されることから、この分離傾向は直系制家族の不安定な変化を孕んだ傾向ばかりではなく、家族内部の親子両世代間の境界を明確に区別する比較的安定した傾向である。したがって、現在の核分離の傾向は家族の変質をせまる現象ではなく、家族の変形に留る現象である、といえる。
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