抄録
本稿は、婦人就業を規定する要因の分析、労働市場の構造の分析、職業経歴のパターンの分析、家族の稼得構造の分析から、戦後の婦人就業の性格を明らかにする。戦後の女子労働力率の低下は農民層分解によって生じたものだが、雇用労働者の増大は都市家族の周期的変化と歴史的変化とに起因している。周期的変化としては、出産児数の減少に伴う、就労可能期間の増大が重要である。また、歴史的変化としては、妻の役割が階層別で異化し、ノン・マニュアル階層の妻の主婦化とマニュアル階層の妻の就業化が進んでいることが重要である。しかし、雇用労働者の増大は労働それ自体や稼得の補助的性格の変化を伴わない。