社会学評論
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夫婦の葛藤解決表出過程 (1)
-日・印・米の比較調査-
熊谷 文枝
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1979 年 30 巻 1 号 p. 36-50,112

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抄録
家庭内には、種々の葛藤状態が存在する。それは、Functionalist and Consensus Mondelでは説明し難いが、家族をConflict Modelで分析しようと試るのであれば、当然考えられる現象である。本稿では、夫婦が葛藤状態をいかに解決していくか、日本、インド及びアメリカにおける調査に基き考察した。その主要な結果は、以下の四点に要約される。
第一は、Strausにより考案された夫婦の葛藤解決策測定の尺度 (Conflict Resolution Tactics Scaleには、Reasoning (話し合い) 、Verbal Aggression (口喧嘩) 及び Violence (暴力) の三種が含まれる) を国際比較研究に応用する妥当性が明らかとなった。第二は、夫婦の暴力度は、アメリカが群を抜いて高く、日本そしてインドが続く。不和葛藤解決表出過程にも各々の文化社会の特徴が反映していると思われる。つまり、アメリカの表出文化、日本の遠慮文化、そしてインドの無抵抗主義文化がこれである。第三は、これら三国に於て、夫婦間の葛藤解決表出過程には、「目には目を」と言った報復手段がとられる点である。夫婦間の交わりにはReciprocity (交互作用) の根本原理が働いている為、各成員は相手の行動に相応するように自分の行動を認定していく。第四は、ギリシャ悲劇に源を発する Catharsis Theory を応用して、夫婦間の不和葛藤解決表出過程を考察する事は、妥当性の少い事が判明した。つまり、Verbal AggressionとViolence の相関係数は高く、前者を後者の代理と考える事は出来ない。
夫婦間における暴力に関する研究は、アメリカの家族社会学では近年盛んに行われているが、その原因は未だ明らかにされていない。それは主として各文化に於て、男性と女性の各々に割り当てられた社会構造に於ける地位に起因するものと考えてよいであろう。
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