社会学の研究領域では、まだ身体論と呼ばれるようなまとまった考察はおこなわれていないが、ヒューマニスティック・パースペクティヴで日常生活の世界と生活している人間に社会学のサーチライトが向けられてもいる現況において、私たちは、座標原点でもあれば根源的な表出空間でもある身体に注目しなければならないだろう。現象学的社会学でも身体についての若干の考察は見られるが、身体については、今日のところ、実存社会学の分野で積極的な検討が加えられている。ここでは、そのような検討をふまえて、人間と世界という軸で身体を視点として私たちが生きている世界地平に目を向けたいと思う。
私たちにとって、現実構成は、日常的な営為なのである。現実構成とは何か、身体とは何か、ということを考えながら、人間そのものに向かっていきたいと思う。社会学的人間学にいたる一つのステップとして、現象学と社会学というコンテクストで身体について若干の考察を試みたいと思う。
身体を考えるということは、日常生活の場面での世界経験を考えるということだ。私たちは、自分の身体によって、この世界に巻き込まれているのである。私たちが経験しつつある身体を出発点として私たちの身のまわりに目を向けるならば、私たちが生きている世界がどのように照らし出されるのだろうか。