社会学評論
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現代日本の階級と社会意識
庄司 興吉
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1982 年 33 巻 2 号 p. 20-40

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抄録

いろいろな意味で世界社会が現実性をもってきた今日、階級構造は国民社会の範囲を越えて世界的規模でとらえなおされねばならない。このような角度から現代日本の階級構造をとらえてみると、それが相対的に平たくなってきて実質的に市民社会化してきているのは、日本社会そのものが高度経済成長をつうじて世界的な帝国主義体制の中心部にはいりこみ、世界的な階級構造の上部にせりあがってきているからであることが分かる。「中流意識」はこのように「中太り」となってきた階級構造の意識面への反映である。ところが、階級意識は、本質的には長期的かつ世界的な視野でその帰趨が見られねばならず、その短期的かつ地域的 (国民社会や先進社会も世界社会からみれば地域である) な現象形態だけで判断されてはならない。そのうえ、問題意識をもって見れば、現代日本の社会意識のなかにも、とくに市民生活の場および/あるいは政治社会をめぐっては、たんに強度の差としてだけでなく方向性の差としても、階級・階層間の分裂が対立が検出される。目下のところ、日本社会は産業主義的な論理で比較的良く統合されており、労働者のあいだには私生活主義/個人主義のエートスが優勢であるが、社会活動主義への突破口も小さいながら開いているので、反体制的組織などによる上からの有効な働きかけによっては、新しい社会運動の担い手としての主体的階級が成立する条件はあるといえる。

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