本稿のそもそもの目的は、ヨーロッパにおける階級論の動向を紹介しコメントするようにとの編集委員会からの依頼に応え、この任務をN・プランヅァスが提起した理論問題に対する反応の諸相に絞って果そうとするものであった。しかしその目的を全面的に実現することができず、作業は半ばにして終っている。
まず第一に、イギリスのポスト・アルチュセーリアンを代表するB・ヒンデス (およびP・ハースト) の階級論の内容が紹介され、その中でもとりわけ経済的階級/政治的勢力の峻別と彼のプランヅァス解釈-プランヅァスはアルチュセーリアンであるよりもむしろルカーチアンだとする解釈-に疑問が呈せられる。ついでアメリカのA・プシェヴォルスキの階級形成過程論が紹介・コメントされ、彼の論旨に潜む曖昧さが三つの論点をめぐって指摘される。さいごに、一方ではE・O・ライトの「決定の諸様式」論に、他方ではS・ホールによる「表現の理論」の提唱に注意を促しつつ、根本的な争点の所在を示唆して結論にかえられている。