社会学評論
Online ISSN : 1884-2755
Print ISSN : 0021-5414
ISSN-L : 0021-5414
パラドックスとしての学歴主義
パーソナリティ・システムとの関わりをめぐって
石戸 教嗣
著者情報
ジャーナル フリー

1995 年 46 巻 1 号 p. 16-28

詳細
抄録

教育システムが自己準拠的な機能システムであるためには, 学歴主義をいかに反省するかが大きな問題として存在する.本稿は 1980 年代に顕著になった悪循環型の学歴主義, すなわち, 学歴効用の低下と逆行する形での学歴獲得熱の高まりについて, ルーマンのメディア論に依拠しつつ考察するものである.それによれば学歴メディアは, 自己と他者の差異と同一をめぐるパラドックスを含んでいることが示される. 他方で, 日本型学歴主義の重層的拘束力のゆえに, 教育システムとパーソナリティ・システムとの関係は, 両者の「相互浸透」ではなく, 後者から前者への「一方的浸透」から成立っている. その「一方的浸透」 を通じて学歴メディアのパラドックスはパーソナリティ・システムの動機レベルでのパラドックスに転移する. そのパラドックスに自足するのはアイデンティティ獲得の方策が他に見いだせないためである. このような疑似アイデンティティを与えることが今日の学歴主義の機能である.

著者関連情報
© 日本社会学会
前の記事 次の記事
feedback
Top