社会学評論
Online ISSN : 1884-2755
Print ISSN : 0021-5414
ISSN-L : 0021-5414
自生的秩序と個人主義的秩序
ハイエクの自生的秩序論における正義論的秩序問題
土場 学
著者情報
ジャーナル フリー

1995 年 46 巻 1 号 p. 2-15

詳細
抄録
本稿は, ハイエクの自生的秩序論を, 「個人主義的秩序はいかにして可能か」という正義論的秩序問題に対する解答として捉える視点から分析し, その問題点を析出する. ハイエクの自生的秩序論は, 個人の「自由」と社会の「進歩」が整合的に進展していくプロセスを証示することを最大のねらいとしている.しかしそこで重要なポイントは, ハイエクの論証は, 「ルール・システムに従属した〈主体〉」を公理とする「自生的秩序」の論理と「ルール・システムから独立した〈非主体〉」を公理とする「文化的進化」の論理という二つの異なる論理的位相のもとで成立している, ということである.したがって, いずれにせよそこには「ルール・システムから独立した〈主体〉」は存在せず, ゆえに結局, ハイエクの自生的秩序論のもとでは個人主義的秩序にかんする正義論的秩序問題は意味をなさないのである.
著者関連情報
© 日本社会学会
次の記事
feedback
Top