社会学評論
Online ISSN : 1884-2755
Print ISSN : 0021-5414
ISSN-L : 0021-5414
集合行為フレームの動員潜在力分析
コードの歴史的記述分析とその含意
荻野 達史
著者情報
ジャーナル フリー

1998 年 49 巻 2 号 p. 206-220

詳細
抄録
社会運動の文化とホスト社会の文化との関係性について, 理論的に言及する研究は近年多く見られるが, その分析方法のレベルで定型的な様式が存在するわけではない。そこで本稿では, 集合行為フレームの動員潜在力に関する理論的考察を導入としつつ, 実際に事例研究を行い, 一つの分析方法を提示することに照準している。まず, 理論的作業を通して, 二つの分析課題を抽出した。第一に, 集合行為フレームを構成するコードの社会的一般性を検討すること。第二に, 集合行為フレームが, 他の文化的領域において意味付与される, すなわち〈接合〉 (articulation) される可能性について, フレームの内的構成および外的な文化的文脈の両面から検討することである。これらの課題は, 焦点となるコードの生成と一般化を, そして関連的な言説領域の内的分化とその動態を, 歴史的に記述する作業において果たされるものである。次に, 事例研究では, 「いじめ」問題に関わる集合行為フレームを取り上げた。その中で使用されている, 「母親」カテゴリーに付帯するコードが特に注目されるべきことを示した上で, そのコードの一般化が「主婦」言説領域で生じたことを明らかにした。また, 同じく「主婦」言説の内的な布置状況から, その一部が当該の集合行為フレームを吸引する可能性があることも検討した。以上の作業を通して, 本研究は社会運動論における文化分析のありうべき焦点や方法を具体的に示したものである。
著者関連情報
© 日本社会学会
前の記事 次の記事
feedback
Top