社会学評論
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合理的選択理論批判の論理構造とその問題点
佐藤 嘉倫
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1998 年 49 巻 2 号 p. 188-205

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抄録
本稿の目的は, 合理的選択理論に対する批判を分類し, それぞれの批判の論理構造を検討し, 受け入れるべき批判を明らかにすることである。 批判は次のように分類される。 (1-a) 選好の文化依存性の指摘, (1-b) プロスペクト理論, (2-a) 合理性仮定の経験的妥当性に対する批判, (2-b) 共有知識仮定に対する批判, (3-a) 経験的事象の説明可能性に対する批判, (3-b) 複数均衡の存在に対する批判, (3-c) 社会現象は行為から成り立つとは限らないという批判。
これらの批判のうち, (1-a) から (2-b) までは, 合理的選択理論の仮定に関する批判である。これらの批判は, 経験科学理論に対する批判として意味がないわけではないが, 理論の説明力を無視して仮定の妥当性のみを問うならば, 生産的ではなくなる。 (3-a) の批判は, 合理的選択理論の説明力に対する批判であり, 重要である。 (3-b) の批判に対しては合理的選択理論は適切に対処できる。 (3-c) の批判は, 合理的選択理論よりも優れた説明力を持つ理論を提示していないので, 現状では受け入れるわけにはいかない。 以上の批判の検討から, (3-a) の批判に適切に対処することが, 合理的選択理論をより豊かな社会学理論にするメイン・ルートであると結論される。
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© 日本社会学会
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