1998 年 49 巻 3 号 p. 407-425
本稿では, 日本における「健康の社会学」の発展と社会学サイドからのさらなる参加を期待する立場から, 「健康の社会学」の現状と課題について論じた。
第1には, 保健医療領域に社会学的なアプローチをする学問分野を「健康・病気と保健・医療の社会学」と考え, 「健康の社会学」をその略称として用いる必要とその根拠について述べた。
第2に, このような意味での「健康の社会学」がその対象と方法において持つ総合性と体系性について明らかにし, 日本においても「健康の社会学」の総合的な発展がめざされなければならないことを述べた。
第3に, 「健康の社会学」が現代の保健医療におけるパラダイムシフト (「生物医学モデル」への批判, 「社会モデル」の提案) と密接な関係を持って生成・発展してきていることを明らかにし, 日本の「健康の社会学」もそういうパラダイムシフトとの関係において展開, 展望されなければならないことを示唆した。
最後に, 「健康の社会学」の発展のためには, 多様な研究の発展が重要であること, また, 全体としては, 問題志向性を持った研究が期待されることを述べた。