社会学評論
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気高さの社会学
シグナル理論から見たブルデューとヴェブレン
小原 一馬
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2001 年 52 巻 2 号 p. 196-213

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抄録

本稿の目的は, ブルデューとヴェブレンの2人の, 気高さに関する理論を, シグナル理論を通し相互に比較することによって, それぞれの理論の特徴を明らかにすることである.その結果, ヴェブレンの理論は, グラーフェンのシグナル (=ハンディキャップ) モデルとその前提・結論を共有することがわかった.一方ブルデューの理論の基本骨格と考えられる戦略/資本概念は上記のシグナルモデルと前提をほぼ共有するものの結論だけが異なり, 理論に矛盾が存在していることが発見された.この矛盾はブルデューの理論のもつ, 上記の基本骨格とは相容れない別要素に着目した解釈によって解消可能である.その別要素とは1 : 複数の異なる欲求の導入 2 : 経済条件による行動の直接決定論の導入, である.このうち1の選択は, 価値の純粋な社会構造による決定という考えを放棄し, ヴェブレンと同性格の理論をとることを意味しており, 2の選択は戦略概念の放棄を意味する.また, この分析の過程で, ブルデューの気高さに関する理論が広い意味での経済還元論であること, ヴェブレンの競争心の概念には, 直接の意図が必ずしも含意されないこと, も同時に確認される.後者は, ブルデュー, エルスターによるヴェブレン批判に対する反批判となっている.

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