抄録
電離放射線の本質であるイオン化とそれに伴う化学反応を一定の空間に集約するという考え方は,電離放射線を利用した材料の加工や微細構造の観察における「常識」とも呼べる考え方である.一方で放射線化学におけるスパーの考え方は,バルク全体としては高い透過能に起因した均一な活性種の分布を前提に,光化学に比べ高い定量性を与える最大の要因でもある.本稿では,これらの境界領域ともいえる,単一の粒子によって引き起こされる“不均一性”と,高い透過能に由来した“次元制御性”を巧みに用いた,「ありとあらゆる材料」のナノ構造化を実証し,その機能化・機能複合化を目指した一連の研究成果について紹介する.