抄録
パーキンソン病(PD)の死因の最多は肺炎で,肺炎の発症には誤嚥物を喀出する咳嗽能力や日常生活動作能力などの低下が関与する.神経筋疾患では,Cough Peak Flow(CPF)には肺活量や口腔内圧が関連し,胸郭の可動性の維持や,低下した呼吸筋力の補助が有効といわれているが,PDでは胸郭ストレッチや呼吸介助法を行ってもCPFが改善しない症例が多い.そこで,PDのCPFに,変換運動障害や動作緩慢の影響があることを明らかにする目的で,CPFとUnified Parkinson’s Disease Rating Scale(UPDRS)や動作速度などとの関係を検討した.
重回帰分析ではUPDRS,なかでも変換運動が検出され,CPFの大きさでは,PDの重症度や,起き上がり動作と歩行の速度で有意差を示した.
PDの咳嗽能力の向上には,運動のタイミングと速度に着目したリハビリテーションを検討する必要があると考える.