抄録
目的:労作時呼吸困難は,呼吸器疾患患者の活動を制限する主な要因となっている.これまで安静時の呼吸困難と脳活動の関係が報告されているが,労作時呼吸困難と脳活動の関係は検討されていない.そこで,労作時呼吸困難と脳活動の関係を明らかにすることを目的とした.方法:対象は健常ボランティア成人16名.自転車エルゴメータにて最大仕事量の40%定常負荷と2段階(各2分)の呼気抵抗を加え,労作時呼吸困難を誘導した.呼吸困難をボルグスケールで,大脳皮質血流量を近赤外分光法で測定した.酸素化ヘモグロビン(以下;oxy-Hb)濃度の増加を脳賦活とした.結果:運動負荷のみでは,呼吸困難は軽度で脳賦活は認められなかったが,呼気抵抗を負荷することで労作時呼吸困難と前頭前野領域の脳賦活がみられた.しかし,左右感覚運動野領域の脳賦活は認められなかった.労作時呼吸困難は,若年群に比べ高齢群で有意に高値を示した.一方で,呼吸困難ピーク時の前頭前野領域の脳賦活は,高齢群に対して若年群で高値を示した.結論:労作時呼吸困難は,前頭前野領域の脳賦活と関連していた.労作時における前頭前野領域の脳賦活は,高齢群で低下している可能性が示唆された.