抄録
石巻地域では,沿岸に沿って,住居,商工業,漁業の場が集中しており,東日本大震災時の津波で甚大な被害を受けた.津波による広範囲で大規模な家屋破壊,停電,地域分断,孤立化により,多くの在宅酸素療法(HOT)患者が酸素供給を断たれた.他院患者を含め88名のHOT患者が当院に来院し,外来扱いで,中央配管,その後,酸素濃縮機より,酸素を供給された.
震災後2ヵ月間は,呼吸器救急患者の入院は,昨年,一昨年の同時期に比べて3倍以上に増加した.肺炎の患者は4倍に増加した.震災後1週間は,津波海水を吸引した肺炎が若干名みられ,その後は高齢者肺炎が増加,粉塵吸入が原因と考えられる肺炎もみられた.COPD増悪で入院した患者は5~7倍に増加した.気管支喘息発作で入院した患者は4~6倍に増加した.
大規模災害時のHOT患者対策マニュアル,避難所環境対策,復興・復旧作業での有害粉塵対策が必要である.