日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌
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シンポジウムIII
終末期の医療選択と倫理的諸問題
有田 健一
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2014 年 24 巻 2 号 p. 167-174

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抄録

終末期の医療選択においては患者の意思を尊重することが求められる.しかし患者は自分の願いや考えを明らかにすることには疎く,またみずからの発言によって周囲の人々を困惑させることは望まないことが多い.さらに終末期にはかなりの患者が正確な判断を下すことができない状態となる.したがって自分の考えを伝えられなくなったときに備えて,事前に希望や思いを家族や医療者との話し合いのなかで伝えておくことは大切である.とはいえ事前指示は状況によって変化しやすく,また親世代は自分の行く末を暗黙の期待下に子供世代へ託すことも多く,本邦ではこうした取り組みの広がりは乏しい.医師は今後に備えて“患者の意思を医療選択に生かす文化”の創生を指導すべきである.広島県地域保健対策協議会は医師と患者の対話を増やすなかで患者の価値観や希望を把握することを目指してアドバンス・ケア・プランニングを勧める事業を開始した.この取り組みが広がれば患者の意向を尊重した医療の提供や,終末期・看取りの場での倫理的な課題の克服につながりうる.医療の人生設計に沿った尊厳ある終焉を迎える環境整備が進むことに期待したい.

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© 2014 一般社団法人日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
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