抄録
【目的】心臓血管手術後患者において,背臥位から端座位・立位へのモビライゼーションにより,気管挿管・人工呼吸からの離脱(抜管)直後の咳嗽力が改善するという仮説を検証する.
【対象と方法】心臓血管手術後に,集中治療室で12時間以上の挿管・人工呼吸を施行された患者を前向きに調査した.咳嗽力の指標には,咳嗽時最大呼気流速(peak cough flow: PCF)および咳嗽時呼気量(cough expiratory volume: CEV)を用いた.PCFとCEVは抜管後3時間以内に測定した.測定肢位は,背臥位,45度受動坐位,端坐位直後,離床後端坐位の4つとした.
【結果】症例数33例.PCFは背臥位134.9 L/分,45度受動坐位162.7 L/分,端座位187.7 L/分の順に有意に増加し,離床後端坐位が206.2 L/分と4肢位の中で最も高値を示した.CEVも同様に背臥位,45度受動坐位,端坐位と有意に増加し,離床後端坐位が最も高値を示した.
【結論】心臓血管手術後患者では,抜管直後の咳嗽力はモビライゼーションを進めるにつれ改善する.