抄録
安定期慢性閉塞性肺疾患(以下COPD)患者の栄養治療に役立つ情報を得るため,COPD患者と健常者の口腔内乾燥症状,味覚感度を横断的に検討した.口腔内乾燥症状の比較では,「食物が飲み込みにくい」(p<0.001),「口の中がネバネバする,話しにくい」(P=0.016)の2項目において,COPD患者と健常者の間に有意差が認められた.COPD患者では味覚感度が鈍化している傾向がみられ,高度の味覚感度低下のある患者が20%にみられた.COPD患者の中には,口腔内乾燥と高度な味覚異常のみられる者が存在する可能性があり,これは正常な食事摂取を困難にし,栄養障害を惹起すると推測される.COPD患者に対する栄養治療では,薬剤を確認するとともに,口腔内乾燥及び味覚感度を評価する必要性が示唆された.