抄録
左室駆出分画(LVEF)が保たれた心不全(HFpEF)は左室拡張障害を有することが多いが,臨床的安定期COPD患者において左室拡張障害を呈する患者群の臨床的特徴は必ずしも明らかでない.本研究ではCOPDにおいて左室拡張障害に関連する臨床的因子を検討することを目的とした.対象は男性COPD患者50例とし,心臓超音波検査のE/E’の値にて,拡張障害なし群(E/E’<15),拡張障害あり群(E/E’>15)の2群に分割した.その他心機能や呼吸機能,血液検査,画像所見,運動耐容能を評価し,2群間で比較検討を行った.その結果,拡張障害あり群はなし群に比較し,有意に脳性ナトリウム利尿ペプチド (BNP)が高値であり,左房径(LAD),心胸郭比(CTR)も有意差を認めた.また相関分析においても,これらの要因はE/E’と有意な関連を認めた.COPD患者における左室拡張障害は運動耐容能との直接の関係は否定的であるが,潜在的に心拡大/心負荷を呈していることが示され,HFpEF発症の危険因子になりうるため,慎重な経過観察が必要と考えられた.