抄録
厚生労働科学研究「災害時及び災害に備えた慢性閉塞性肺疾患等の生活習慣病患者の災害脆弱性に関する研究」班は,主として在宅酸素療法を実施している慢性呼吸器疾患を有する患者における,緊急時・災害時の問題点を解明することを目的として調査研究を進めてきた.本研究は,自治体の対策が進められている松本市における調査から,現状と課題について検討した.199名(回答率44.9%)の分析では,酸素が急に使えなくなり困った経験が13%,緊急時の対応に関する説明は酸素業者から受けたが最も多く(51.3%),担当する医療者から説明を受けたは約2割に過ぎなかった.酸素の効果を実感している患者群では,酸素が急に使用不能となった場合に体調がすぐに悪化することを懸念する傾向が見られた.以上より,患者の置かれた環境,患者自身の緊急時・災害時に対する意識等を把握した上で,災害時や停電時の対応を繰り返し説明したり,シミュレーションを体験させるなど自助能力を高める患者教育が必要であることが示唆された.