超高齢社会を迎えた日本においては高齢者の肺炎,その中でも誤嚥性肺炎の予防と対策が大きな課題となっている.
これまで肺炎といえば,呼吸器内科医をはじめとする呼吸器に関連する医療者が,その対策の主軸を担ってきた.しかし,誤嚥性肺炎は,その原因となる「誤嚥」を診ている医療者と,「肺炎」という結果を診ている医療者が異なるという特殊性を有している.
誤嚥性肺炎とは呼吸器のみの疾患ではなく,「どのような食事をどれだけ食べてよいか」というギリギリのラインを,嚥下機能,口腔機能,口腔内の状況,服薬内容,栄養状態,循環機能,呼吸機能など,さらにはその症例を取り巻く家族や医療・介護リソースを総合的に判断して見極めるという非常に興味深い疾患である.
本稿では,誤嚥性肺炎の予防と対策を進めるにあたり,誤嚥と肺炎の両方の面からの誤嚥性肺炎について考察を加えた.本稿の主たる目的は誤嚥と肺炎の橋渡しである.