研究 技術 計画
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企業経営と研究開発の関係に関するシミュレーションの試み : その11 規模の経済性に関する諸問題
二宮 和彦
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1999 年 14 巻 1 号 p. 64-73

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抄録
日本の大抵の製造業企業は最適化状態に収斂しており、各企業が擁する製品(群)の(下限)販売単価は事業の利益極大化(下限)販売単価に等しく、税前利益は極大化していると既報で述べた。利益極大化(下限)販売単価は事業の研究開発要因倍率と企業規模とに依存するが、この両者間には、従業員1人当りの売上高と研究員1人当りの研究開発費の比率の関数として定義されるパラメター、Siを介した相互依存関係が見出されており、それを利用して利益極大化(下限)販売単価及び極大化税前利益の企業規模依存性に関する関係式をそれぞれ導いた。これらの関係式によるシミュレーション計算から、極大化税前利益〜企業規模の関係は1つの極大点を、利益極大化(下限)販売単価〜企業規模の関係は1つの極小点を持つことを示した。またこれらの極点の座標はいずれもSi のみの関数で、Si値が大きくなるほど利益は大きく、販売単価は小さく、極点を与える企業規模は大きくなる。組立て型最終製品企業のSiの実績値は素材製品企業のそれより一般に小さく、組立て型最終製品を生産する大企業の企業規模は、極点を与える企業規模と大差ないものと推定された。付文において、Siを媒介変数とする研究開発要因倍率と企業規模との相互依存関係式は、研究開発費の規模効果の記述式に他ならぬことを指摘した。
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1999 研究イノベーション学会
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