抄録
近年,産学共同研究の重要性が高まっている。事実,我が国の産学共同研究は1991年度の1,035件から,2001年度の4,187件へと4倍に急増している。反面,このような産学共同研究における企業-大学間のネットワーク形成について,我が国の実態に即した解明は十分なされているとはいえない。本稿は,横浜国立大学と新潟大学の2大学が実施した産学共同研究ファクトデータに基づく動向分析である。大都市圏に位置する横浜国立大学と地方圏に位置する新潟大学を比較分析した結果,立地地域といった大学特性が産学共同研究の活動に影響を及ぼすことを解明した。併せて企業規模による影響を解明した。更には,受入件数や金額の急増の背景には「集中化」と「多様化」の二面性が発生していることに加え,企業-大学間距離は地域内・三大都市圏・その他の3種類の分布の連携クラスターに分割できることを示した。