研究 技術 計画
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革新的な知識・技術に起因するイノベーション・システムの動的変化に関する分析 : 農作物育種における事例分析
庄司 真理子
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2015 年 29 巻 4 号 p. 281-295

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抄録
本研究は,セクトラル・イノベーション・システムの3つのビルディング・ブロック(知識・技術,アクターとネットワーク,制度)の枠組みを用いて,研究開発によって得られた革新的な知識・技術によって引き起こされるイノベーション・システムの動的変化を分析する。事例として農作物育種を取り上げ,特にハイブリッド技術および遺伝子組換え技術による変化を分析した。その結果,革新的な知識・技術の登場は,それらの吸収能力をもつ中心的なアクターの交代や新たなアクターの参入と関係があること,アクターの研究開発インセンティブを高める制度の拡充と関係があること,革新的な知識・技術と社会との関係をつなぐ制度の必要性が生じることなどが示唆された。近年,農作物育種の分野ではNBT(New Plant Breeding Techniques)とよばれる革新的な知識・技術での実用化が進んでおり,さらにイノベーション・システムの変化が生じる可能性がある。今後の農作物育種に関する政策的課題の検討においては,NBTによるイノベーション・システムの変化の方向性を考慮に入れた検討も必要であると考えられる。
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2015 研究イノベーション学会
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