2023 年 38 巻 3 号 p. 299-308
本稿では倉敷市の創業支援を取り上げ,地域の創業支援の実施主体がどのように相互の連携と調整を行っているかを事例で紹介している。事例分析では,創業支援に関するアンケート調査を用いるとともに,創業支援の実施主体である市および地域の民間団体・事業者(商工会議所)と,支援の利用者である創業間もない企業(株式会社Bounce back)の双方からのヒアリングに基づいている。支援実施主体と利用者の双方のデータを用いることで,地域の創業エコシステムの特徴や貢献,そして課題をより明確にできる。分析から,倉敷市では地域の自治体,商工団体,金融機関から構成される「くらしき創業サポートセンター」が中核的なエコシステムを形成しており,この取り組みは支援の利用企業からも高く評価されていることがわかった。ただし,支援策のバラエティー,創業後のフォローアップや創業支援の周知と創業希望者へのアプローチに課題を抱えていることが指摘された。