研究 技術 計画
Online ISSN : 2432-7123
Print ISSN : 0914-7020
38 巻, 3 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
巻頭言
  • 長岡 貞男
    原稿種別: 巻頭言
    2023 年 38 巻 3 号 p. 278-280
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2023/10/05
    ジャーナル フリー

    The decline in R&D performance of Japanese industry has been pointed out widely in recent years. I consider the following four potential causes for such decline. First, the level of R&D investment in Japan has been stagnant since the Lehman shock, which caused a significant appreciation of Yen and the subsequent deflation of the Japanese economy. Second, Japanese industry has lost its advantage in the speed at which it can develop technologies from prior technologies. Third, there remain a large difference in the extent to which science is utilized for R&D, compared to the U.S. and the U.K. Fourth, the level of utilization of foreign inventors and knowledge is low. I suggest the necessity to build an R&D strategy that recognizes both global competition and opportunities for R&D in these respects.

特集 地域のイノベーション・エコシステム:国と地方による創業支援と研究開発支援の視点から
  • 西村 淳一
    原稿種別: 特集
    2023 年 38 巻 3 号 p. 281-285
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2023/10/05
    ジャーナル 認証あり

    In the special issue, we conduct research and investigation on the theme of local innovation ecosystems from the perspective of national and local supports for startups and R&D, using both quantitative and qualitative analyses. While the analytical method of the contributed papers is diverse, they all share the point that the revitalization of regional economies and the promotion of science and technology are becoming increasingly important policy issues in Japan. Support for startups and R&D is a means to achieve this goal, and how it should be designed needs to be considered in terms of multilevel policy governance, as well as cooperation and coordination among various local support organizations.

  • 岡室 博之
    原稿種別: 特集
    2023 年 38 巻 3 号 p. 286-298
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2023/10/05
    ジャーナル 認証あり

    地域の創業エコシステムが近年,世界的に注目を集めている。そこでは特に,地方自治体や地域の支援事業者(商工会議所,商工会,地域金融機関等)の役割が重要であるが,地方自治体(市区町村)の創業支援のしくみについてはまだ研究の蓄積が乏しい。本稿は筆者自身のこれまでの調査・研究を踏まえて,日本の自治体による創業支援と地域の支援事業者の役割に注目し,創業支援の効果と課題を考察する。本稿は第一に,日本における創業支援の展開を概観し,2014年1月に施行された「産業競争力強化法」に基づく「創業支援事業計画」認定事業に注目する。これは地域の官民連携に基づく自治体独自の創業支援の策定と実施を促す,創業エコシステムの形成を支援する画期的な政策である。第二に,全国の市区町村のパネルデータを用いて,この認定事業の政策効果を検証する。この政策によって,特に人口が少なく事業所密度が低いなど創業に不利な地域(自治体)で開業率・開業数が有意に上昇したことが示される。第三に,筆者自身の全国自治体(市区)アンケート調査に基づいて,自治体の創業支援の全体像と自治体間の取り組み方の違いを示す。回答市区のほとんどが多様な創業支援事業を実施しているが,最も多いのが「創業セミナー・創業塾」と「個別の専門的助言」といったソフト支援である。これらの創業支援の多くが独自の「創業支援事業計画」に基づいて,地域の金融機関や商工会議所等と連携して運営されている。

  • 亀鷹 皓平, 西村 淳一, 岡室 博之
    原稿種別: 特集
    2023 年 38 巻 3 号 p. 299-308
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2023/10/05
    ジャーナル 認証あり

    本稿では倉敷市の創業支援を取り上げ,地域の創業支援の実施主体がどのように相互の連携と調整を行っているかを事例で紹介している。事例分析では,創業支援に関するアンケート調査を用いるとともに,創業支援の実施主体である市および地域の民間団体・事業者(商工会議所)と,支援の利用者である創業間もない企業(株式会社Bounce back)の双方からのヒアリングに基づいている。支援実施主体と利用者の双方のデータを用いることで,地域の創業エコシステムの特徴や貢献,そして課題をより明確にできる。分析から,倉敷市では地域の自治体,商工団体,金融機関から構成される「くらしき創業サポートセンター」が中核的なエコシステムを形成しており,この取り組みは支援の利用企業からも高く評価されていることがわかった。ただし,支援策のバラエティー,創業後のフォローアップや創業支援の周知と創業希望者へのアプローチに課題を抱えていることが指摘された。

  • 秦 茂則
    原稿種別: 特集
    2023 年 38 巻 3 号 p. 309-314
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2023/10/05
    ジャーナル 認証あり

    本稿では近年,地域及び国内経済活性化の観点で内外で注目を集めているベンチャー(スタートアップ)支援策についてその変遷をたどりつつ,アカデミックな観点からこうしたスタートアップ政策の理論的根拠について近年の注目を集めている「起業エコシステム」を解説する。

  • 西村 淳一
    原稿種別: 特集
    2023 年 38 巻 3 号 p. 315-331
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2023/10/05
    ジャーナル 認証あり

    イノベーション政策の地方分権化が期待される中,地域経済振興のための研究開発支援の担い手が中央から地方主導へと移り,都道府県から市町村レベルまで重層的な支援に拡がっている。地域の独自性を活かすイノベーション・エコシステムが推進され,企業や自治体のみならず,地域の多様なプレイヤーが政策支援の対象となり,それらのコミュニティ形成と連携・調整が重視されるが,その実情と仕組みについて全国を網羅する研究は乏しい。本稿では独自の調査に基づいて,エコシステムで強調される相互作用や連携・調整の視点から,自治体(市区)による地域の官民連携に基づく様々な研究開発支援への取り組みに注目した。また,政策支援のユーザーである企業側の視点から,国・県・市区,さらには地域の民間団体・事業者による研究開発支援の利用とそれらの支援への評価についてまとめている。その結果,研究開発支援の実施において,市区と都道府県や民間団体・事業者との情報共有や連携・調整は十分に実施されておらず,さらに,研究開発支援の担い手である市区とユーザーである企業の間には支援に対する評価に乖離がみられた。資源制約の強い市区のような基礎自治体では外部との連携や分担を一層進めること,さらには企業のニーズを考慮し,インセンティブを高めるような制度設計の必要性が示唆される。

  • 田中 義之, 西村 淳一, 岡室 博之, 千葉 文信
    原稿種別: 特集
    2023 年 38 巻 3 号 p. 332-339
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2023/10/05
    ジャーナル 認証あり

    本稿では一関市の研究開発支援を取り上げ,地域の研究開発支援の実施主体がどのように相互の連携と調整を行っているかを事例で紹介している。事例分析では,研究開発支援に関するアンケート調査を用いるとともに,研究開発支援の実施主体である市と,支援の利用者である地域企業(株式会社佐原)の双方からのヒアリングに基づいている。支援実施主体と利用者の双方のデータを用いることで,地域のイノベーション・エコシステムの特徴や貢献,そして課題をより明確にできる。分析から,一関市では原則として,研究開発の専門性の高さゆえに,それぞれの得意領域で研究開発を支援できる機関が独自に実施する方式をとっており,地域のイノベーション・エコシステムを統括するような組織的な枠組みは設けられていないことがわかった。市における研究開発支援の関係機関の間での情報交換は行われているが,市と民間団体・事業者の研究開発支援に関して,全体を包括する俯瞰図やビジョンの共有,それぞれの支援実施主体の役割分担の明確化と官民連携の更なる深化が求められていた。

  • 池田 雄哉, 伊地知 寛博
    原稿種別: 特集
    2023 年 38 巻 3 号 p. 340-353
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2023/10/05
    ジャーナル 認証あり

    本稿では,我が国の研究開発租税優遇措置の概要や主要国における措置の状況を概観したうえで,筆者らが参加したOECD microBeRDプロジェクトの分析結果を紹介する。OECD microBeRDプロジェクトでは,各国の研究開発統計や税額控除データに基づくクロスカントリー分析を行っており,研究開発租税優遇措置や直接的政府資金配分が企業の研究開発投資にどのような影響を及ぼすかを分析している。分析結果から,研究開発支出額に係る限界費用(B-Index)が減少するほど,社内研究開発支出額が増加することが分かった。ただし,その限界効果は企業規模階級によって異なっており,小規模企業では効果が弾力的である一方,大規模企業では効果が非弾力的であった。また,社内研究開発支出額が増加したメカニズムを検証したところ,研究開発従事者数(頭数基準)の増加が関係しており,研究開発従事者の賃金水準が上昇するためではないことが分かった。さらに,社内研究開発支出額に与える効果について,研究開発租税優遇措置と直接的政府資金配分を比較した分析では,研究開発租税優遇措置の効果のほうが大きいことを示した。

  • 原 泰史
    原稿種別: 特集
    2023 年 38 巻 3 号 p. 354-366
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2023/10/05
    ジャーナル 認証あり

    地域の中小企業に関する研究はこれまで,データセットの可用性および分析環境の制約から定量的な分析を行う上での困難が数多く存在した。しかしながら,データサイエンスの普及とともに,近年では民間企業や政府がオープンデータ,あるいは詳細なデータベースを提供しつつある。また,こうした分析についてオープンソースソフトウェアを用いて実施することも可能になりつつある。本稿では,こうしたデータソースの概要について紹介し,具体的な分析例について例示している。従来は行えなかった研究アプローチが,こうした新たなデータセットや分析環境により実現性が増していることを示す。

編集後記
feedback
Top