抄録
本稿では,『生活を伝える方言会話』と『COJADS』という2つの方言談話の資料を,計量的な観点から比較・分析することで,場面設定会話と自由会話という異なる種類の談話データの特徴を明らかにする試みを行った.分析に際しては,両資料の方言テキストに付された共通語訳テキストを共通のコードとみなし,データ化して資料性を分析した.その結果,場面設定会話で,多様で豊富な感動詞が得られるなど,場面設定会話と自由会話で得られる品詞や形式に大きく差があることを実証的に示した.そして,資料の利用目的に応じて,必要なデータが得られる談話調査を計画的に行い,方言の各研究領域を深化させるような資料を整備する必要があることを述べた.