研究 技術 計画
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特集 科学技術イノベーション政策の中の人文・社会科学
人文学・社会科学の特性を活かしたプロジェクトデザインとイノベーション創出に向けた「場」のあり方:大阪大学社会ソリューションイニシアティブの事例から
小出 直史
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2024 年 39 巻 3 号 p. 246-262

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抄録

本稿は,人文学・社会科学領域における共創やイノベーション創出における「場」のあり方について,これまでの人文学・社会科学の振興の経緯を概観し,共創型プロジェクトの重要性が指摘され,設計・実施された「文部科学省委託事業 人文学・社会科学を軸とした学術知共創プロジェクト(以下,学術知共創プロジェクト)」を事例に検討する。本稿が対象とするのは,学術的な個別議論の内容ではなく,共創やイノベーションにおける「場」に焦点を当てた機能的および構造的な課題を整理することである。はじめに,学術知共創プロジェクトを振り返り,「場づくり」と「チーム構築」の関係について検討し,「場」そのものと「場」の前後機能にフェーズを分けて考察を試みた。質の高い「場」を準備することで「チーム構築」が達成されるという言説が成立困難であることに言及し,「場」という機会提供にばかり焦点が当たっている現状に対して,暗黙知となりがちな設計思想や機能についてプロジェクトマネジメントの要素とともに実践的に整理する。そして,研究者へ集まる過度な要請に対して,研究者の外側に研究企画や支援機能を用意することが,研究者に対して優しい共創やイノベーションの環境整備に繋がり,一層の振興を育むための土壌になると考える。

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2024 研究イノベーション学会
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