2024 年 39 巻 3 号 p. 263-280
2000年代以降,日本では,責任ある研究および新たなイノベーションの創出に向けた,科学技術の倫理的・法的・社会的課題ないし含意(ELSI)に関する産学連携の取り組みおよびその機会が充実しつつある。大阪大学社会技術共創研究センターと株式会社メルカリの研究開発組織であるmercari R4Dは,2020年から新規科学技術のELSIを見据えた責任ある研究開発の推進とイノベーションの創出を目的とした産学共同研究を行っている。本稿では,この共同研究のプロセスとその成果について概観し,産学連携の文脈において人文社会系研究者がどのような貢献を果たしたかを明らかにする。また,人文社会系研究者がそれら役割を果たすことがいかにして可能かを検討する。