2024 年 39 巻 3 号 p. 231-245
欧米を中心に進行してきた一連の研究評価の改革の動きは,「責任ある研究評価」という包括的な概念のもとに集結する展開を見せ,「研究評価改革に関する合意」とその連合へと結実した。国内では,ここ数年で「研究評価に関するサンフランシスコ宣言(DORA)」の署名機関の増加など,研究評価改善への意識の高まりが確認できるものの,欧米の動きに比べるとまだ限定的である。
近年,研究評価に論文指標を中心とした定量的アプローチが多用されるなか,人文・社会科学系URAネットワークは,人社系研究の適切な評価を巡り継続的に議論を重ねてきた。分野や立場が異なる関係者と課題を共有し,同じ議論の「堂々巡り」に陥らないための仕組みの必要性を痛感していた同ネットワークでは,DORA Community Engagement Grantの助成を受け,既存の論点を整理した「論点地図」を作成した。
本稿ではこの「地図」の位置付けと意義,活用方法を論じたうえで,国立大学の第4期中期目標期間に新たに導入される社会的インパクト評価について,「地図」を利用した論点整理を試みる。そのうえで,「地図」の更新作業を含め,研究評価の改善に向けた今後の議論のあり方について展望する。