研究 技術 計画
Online ISSN : 2432-7123
Print ISSN : 0914-7020
特集 いま「研究力」をどう捉えるか―エビデンスをめぐる多様な視点
科学技術・イノベーション政策のための研究データ基盤とその活用
七丈 直弘
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2025 年 40 巻 1 号 p. 38-49

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抄録

本論文は,科学技術・イノベーション政策におけるEBPMの重要性が増す中,EBPMを支える研究データ基盤の役割と課題を多角的に分析し,今後の発展方向を提示する。研究データ基盤がEBPMのコンテキスト-メカニズム-アウトカム連鎖を支援する中核的要素と定義し,国際比較分析,事例研究,方法論的・批判的分析を通じて包括的に考察する。

国際比較分析では,米国,EU,韓国との比較から,日本の課題として制度的基盤強化,研究データ基盤の統合・高度化,専門人材育成,政策プロセスへのEBPM体系的導入を指摘した。e-CSTI等の事例研究は,研究データ基盤の政策立案への貢献可能性を示す一方,評価指標偏重等の課題も提示した。方法論的考察ではデータ信頼性と因果推論の課題を,批判的分析ではデータ偏重主義や政治利用のリスクを検討した。

公共政策学,情報科学,科学社会学等の学際的視点から分野横断的知見の統合の必要性を強調し,社会技術システム論を用いて両者の共進化プロセスを展望した。結論として,研究データ基盤とEBPMは政策の質的向上と科学・社会の新たな関係構築に貢献するが,学際的アプローチと国際協調で課題に取り組み,研究者の自律性を尊重する柔軟な政策枠組みの構築が求められる。

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2025 研究イノベーション学会
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