研究 技術 計画
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Print ISSN : 0914-7020
特集 いま「研究力」をどう捉えるか―エビデンスをめぐる多様な視点
研究推進支援機能を担う専門人材とその機能,評価に関する一考察:バウンダリー・スパニングという概念を用いて
高橋 真木子矢吹 命大
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2025 年 40 巻 1 号 p. 98-107

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抄録

近年,オープンイノベーションや社会課題解決への貢献が大学に求められる中,研究力強化を支える専門人材であるリサーチ・アドミニストレーター(URA)の役割が重要視されている。本稿では,URAの機能と評価の在り方について考察する。

日本では現在,約1,800名を超える実務者が活動しているが,その機能・活動の評価指標は未だ確立されていない。本稿では,まず日本のURAの現状を国際比較の視点から概観し,URAの雇用による産学連携の促進,外部研究資金の増加等の効果を定量的に示した分析事例を紹介する。さらに,スタートアップ支援,オープンサイエンス推進,研究倫理対応などURAの機能の多様化の現状や,総合知推進を背景にURAの果たす役割の重要度が高まってきている状況を示す。

その上で,ますます多様化するURAの機能の評価について,境界を越えた連携を支援する「バウンダリー・スパニング」の概念を整理の枠組みとして提案する。また,URAの機能は成果として可視化されにくいという課題があり,定量・定性的評価の充実が求められることを指摘する。

本稿は,URAの機能を多角的に分析し,研究力強化におけるその意義を明らかにするものである。それにより,日本の研究力強化に向けた各種取り組みをEBPMに基づいて進めていくために,URAの適切な評価指標の確立が不可欠であることを論じる。

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2025 研究イノベーション学会
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