2015 年 40 巻 3 号 p. 295-303
異所性脂肪蓄積の一つである,膵への脂肪沈着に注目し,腹部超音波における膵臓と脾臓の輝度の差(膵脾差)を測定し,この膵脾差の大きなBright Pancreas 所見の虚血性心疾患に対するリスク要因としての有用性を検証した.冠動脈疾患を発症した直後の19例(虚血性心疾患群)と,人間ドック症例のうち年齢,性別をマッチングさせた36例(ドック脂肪肝群)との症例対照研究を行った.虚血性心疾患群では,ドック脂肪肝群に比して膵輝度や膵脾差は高値であった.肥満や喫煙,飲酒など虚血性心疾患発症のリスクファクターとして知られている要因を投入して行った多変量解析において,肝腎コントラスト差の大きさに加え,膵脾差79以上のBright Pancreas の所見は,独立した影響因子であることが明らかになった.肝臓のみでなく膵臓の輝度上昇所見も加えたスクリーニング法を用いることで,脂肪肝のうち,将来的に虚血性心疾患を発症する可能性の高い,病的脂肪肝を抽出できることが示唆された.