超音波検査技術
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学術賞―研究
唾液腺腫瘍における超音波ガイド下穿刺吸引細胞診を用いた検体適正率と超音波診断の検討
稲村 慶太南里 和秀米山 昌司岡山 有希子川瀬 瑞樹瓜倉 久美子望月 幸子
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2017 年 42 巻 1 号 p. 36-45

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抄録

はじめに:唾液腺腫瘍における超音波(以下US)ガイド下穿刺吸引細胞診(以下FNA)を用いた検体適正率およびUS診断について検討した.

対象・方法:2010年1月から2014年11月までの81例(耳下腺腫瘍52例,顎下腺腫瘍28例,舌下腺腫瘍1例)である.探触子は穿刺用アタッチメントを装着した8~12 MHzリニア型を使用.装置はアロカSSD6500・5000, α7, F75, 東芝aplio, GE LOGIQ 9を用いた.穿刺針は22GでUSガイド下にて病変内に針先の到達を確認し吸引した.

結果:USガイド下FNAの検体適正率は95.1%(77/81),不適正率は4.9%(4/81)と高い検体適正率であった.細胞診の判定が正常あるいは良性39例,悪性疑いおよび悪性21例,鑑別困難17例であった.そのうち病理組織診断が得られたものは34例でUS診断との不一致は29.4%(10/34)であった.内訳は偽陽性6例(ワルチン腫瘍,唾液腺炎などの炎症性疾患),偽陰性4例(リンパ節転移,多形腺腫由来癌,腺房細胞癌)であった.

考察:病理組織診断との乖離があった偽陰性を再検討すると,多形腺腫由来癌,腺房細胞癌であった例はUSを見直しても悪性所見は見出せず,病理組織診断にて多形腺腫由来癌は良性と悪性が混在し,腺房細胞癌は構造異型が弱かったためUSに反映されなかったと推察され,US診断の限界があると思われた.リンパ節転移の例は唾液腺内外が微妙であり上内深頸リンパ節だった可能性がある.唾液腺腫瘍という先入観から境界明瞭平滑で内部低エコー均一な腫瘤を唾液腺良性腫瘍と判定しており,US診断の精度向上が求められる.また検査技師のガイド下で医師が穿刺する連携で高い検体適正率を保つと思われ,チーム医療を担う存在としての検査技師の積極的参加は重要である.

結語:唾液腺腫瘍の病理組織学的な特性のため,US診断でもある程度の限界があることが示唆された.その上で高い検体適正率を保つためには的確なUS診断の基に医師と連携して実施することが肝要で,このような体制はチーム医療上も重要な検査技師の役割を反映したものである.

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© 2017 一般社団法人日本超音波検査学会
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