超音波検査技術
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42 巻, 1 号
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原著
  • 川地 俊明, 乙部 克彦, 曽根 康博
    2017 年 42 巻 1 号 p. 9-17
    発行日: 2017/02/01
    公開日: 2017/03/02
    ジャーナル フリー

    目的:腹部悪性腫瘍の腹膜播種は,画像診断で発見することはしばしば困難であり,腹膜播種の有無により,治療方針を決定することも多く,的確に診断することが重要である.本研究では,超音波検査における腹部悪性腫瘍の腹膜播種診断の検討を行った.

    対象および方法:対象は術前病期診断36例と術後再病期診断36例の計72症例で,PET/CTにて検出された腹部区分7領域の134結節について評価した.

    結果:72症例の腹膜播種診断能は30.6%であり,その内訳は術前病期診断では27.8%,術後再病期診断では33.3%であった.腹部各領域の結節検出能は,右横隔膜下腔24.0%,左横隔膜下腔0%,大網17.9%,小腸・小腸間膜47.1%,右傍結腸溝10.5%,左傍結腸溝0%,骨盤17.4%であった.また術前病期診断および術再病期診断におけるそれぞれの検出能は,右横隔膜下腔16.6%/30.8%,左横隔膜下腔0%/0%,大網17.6%/18.2%,小腸・小腸間膜66.7%/36.4%,右傍結腸溝8.3%/14.3%,左傍結腸溝0%/0%,骨盤15.4%/22.2%であった.腹水の有無による腹膜播種診断能は,腹水貯留時40.7%,非貯留時24.4%であった.また術前病期診断および術再病期診断におけるそれぞれの診断能は,腹水貯留時30.0%/71.4%,非貯留時25.0%/24.1%であった.

    結論:超音波検査の結節検出能は,小腸・小腸間膜と右横隔膜下腔の領域では他の領域と比べ比較的に高かったが,左横隔膜下腔および左傍結腸溝領域においてはまったく検出できなかった.超音波検査においては,腹膜播種の好発部位を十分観察することが重要である.

学術賞―研究
  • 嶋田 裕史, 久枝 恵美子, 緒方 利安, 川島 博信, 松永 彰, 井上 亨
    2017 年 42 巻 1 号 p. 18-23
    発行日: 2017/02/01
    公開日: 2017/03/02
    ジャーナル フリー

    目的:プラーク上の潰瘍の存在位置ごとの特徴を明らかにする.

    方法:対象は,2013年10月から2015年10月に当院臨床検査部で施行した同一患者を除く潰瘍を認めた症例107例(平均年齢73.4±7.7歳,M/F: 91/16)の126潰瘍.解析は,プラークを中枢部,中心部,末梢部の3分割し,陥凹の深さ,潰瘍底部の動きなどのプラークの特徴との関連を検討した.また,経過観察し得た37潰瘍について形状の変化の有無とプラークの特徴について検討した.

    結果:潰瘍形成部位は,中枢部が最も多く中心部が最も少なかった(中枢部:59潰瘍,末梢部:37潰瘍,中心部:30潰瘍,p<0.05).潰瘍の部位別比較は,潰瘍の深さと可動性に有意差を認め,2.9 mm以下の潰瘍は中枢部に多く(42潰瘍),3.0 mm以上の潰瘍は末梢部に多かった(20潰瘍)(p<0.05).また,可動性は中心部に多く認められた(p<0.05).潰瘍変化の有無と各指標との検討では,可動性と面積狭窄率のみが潰瘍の変化と関連し,可動性を有する群はすべての潰瘍に変化を認め(p<0.05),面積狭窄率75%以上90%未満の群に潰瘍の変化を認めた(p<0.05).

    考察:プラークの中枢部は,シェアストレスによる影響が大きく,これが潰瘍形成や潰瘍の形態変化に関与している可能性が示唆された.またプラークの末梢部は,渦流による内皮障害の影響を受けやすく,これが潰瘍の深さに関与している可能性が示唆された.

    結論:潰瘍は,プラークの中枢部に多く存在し,深い潰瘍は末梢部に多く出現する.潰瘍の経時的な変化は潰瘍の可動性はもちろんのこと,中等度狭窄を有する群と等輝度な潰瘍に多く認められる傾向があり,潰瘍が形成される以前の所見も十分に観察する必要がある.

  • 橋本 碧, 宮越 基, 中谷 穏, 中島 幸恵, 小林 幸子, 伊藤 智栄, 蓮尾 茂幸, 中島 哲, 平岡 伸介
    2017 年 42 巻 1 号 p. 24-35
    発行日: 2017/02/01
    公開日: 2017/03/02
    ジャーナル フリー

    目的:傍神経節腫(paraganglioma)は,副腎外褐色細胞腫ともいわれ,副腎外の交感神経系および副交感神経系の傍神経節から発生する腫瘍である.まれな腫瘍であり,超音波像を主体として検討を行った報告は少ない.今回我々は,傍神経節腫8病変の超音波像を検討したので報告する.

    対象と方法:2001年8月~2014年3月までに当院にて超音波検査施行し,病理組織学的に傍神経節腫と診断された8症例,8病変を対象とした.内訳は,切除7病変,生検1病変,年齢は15~72歳(中央値36歳),性別は,男性4例,女性4例であった.

    各病変の超音波検査における存在部位,大きさ,形状,境界,内部性状,カラードプラの所見について検討した.

    結果と考察:8病変中7病変は後腹膜,1病変は腹腔内に存在した.後腹膜に存在した5病変および腹腔内に存在した1病変の計6病変(75%)は,下大静脈もしくは膵に接していた.大きさは,23~119 mm(中央値65 mm).形状は,類球形6病変(75%),多角形1病変,不整形1病変であった.8病変全て境界明瞭(100%)であった.内部性状は,4病変(50%)は充実性腫瘍,4病変(50%)は囊胞状成分優位の腫瘍であった.血流信号を検出したものは,腫瘍内部に大きな囊胞状成分を認めた症例を除く7病変(88%)であった.由来臓器の特定を行うために,動的観察を駆使した.腫瘍の形状は,類球形が多く,全て境界明瞭を示した.また,内部に血流信号を検出する病変が多かった.存在部位とこれらの所見を合わせて診断する必要がある.内部に囊胞状成分を伴わない病変が4病変あり,囊胞状成分の有無のみで鑑別診断することは困難と考える.

    結論:後腹膜に位置し,類球形,境界明瞭で血流豊富な腫瘍を認めた際は,傍神経節腫を念頭に診断を進める必要がある.

  • 稲村 慶太, 南里 和秀, 米山 昌司, 岡山 有希子, 川瀬 瑞樹, 瓜倉 久美子, 望月 幸子
    2017 年 42 巻 1 号 p. 36-45
    発行日: 2017/02/01
    公開日: 2017/03/02
    ジャーナル フリー

    はじめに:唾液腺腫瘍における超音波(以下US)ガイド下穿刺吸引細胞診(以下FNA)を用いた検体適正率およびUS診断について検討した.

    対象・方法:2010年1月から2014年11月までの81例(耳下腺腫瘍52例,顎下腺腫瘍28例,舌下腺腫瘍1例)である.探触子は穿刺用アタッチメントを装着した8~12 MHzリニア型を使用.装置はアロカSSD6500・5000, α7, F75, 東芝aplio, GE LOGIQ 9を用いた.穿刺針は22GでUSガイド下にて病変内に針先の到達を確認し吸引した.

    結果:USガイド下FNAの検体適正率は95.1%(77/81),不適正率は4.9%(4/81)と高い検体適正率であった.細胞診の判定が正常あるいは良性39例,悪性疑いおよび悪性21例,鑑別困難17例であった.そのうち病理組織診断が得られたものは34例でUS診断との不一致は29.4%(10/34)であった.内訳は偽陽性6例(ワルチン腫瘍,唾液腺炎などの炎症性疾患),偽陰性4例(リンパ節転移,多形腺腫由来癌,腺房細胞癌)であった.

    考察:病理組織診断との乖離があった偽陰性を再検討すると,多形腺腫由来癌,腺房細胞癌であった例はUSを見直しても悪性所見は見出せず,病理組織診断にて多形腺腫由来癌は良性と悪性が混在し,腺房細胞癌は構造異型が弱かったためUSに反映されなかったと推察され,US診断の限界があると思われた.リンパ節転移の例は唾液腺内外が微妙であり上内深頸リンパ節だった可能性がある.唾液腺腫瘍という先入観から境界明瞭平滑で内部低エコー均一な腫瘤を唾液腺良性腫瘍と判定しており,US診断の精度向上が求められる.また検査技師のガイド下で医師が穿刺する連携で高い検体適正率を保つと思われ,チーム医療を担う存在としての検査技師の積極的参加は重要である.

    結語:唾液腺腫瘍の病理組織学的な特性のため,US診断でもある程度の限界があることが示唆された.その上で高い検体適正率を保つためには的確なUS診断の基に医師と連携して実施することが肝要で,このような体制はチーム医療上も重要な検査技師の役割を反映したものである.

  • 渡邊 伸吾, 種村 正, 冨田 沙希, 堤 由美子, 片岡 容子, 由井 恵美, 佐々木 伸子, 青木 和夫
    2017 年 42 巻 1 号 p. 46-53
    発行日: 2017/02/01
    公開日: 2017/03/02
    ジャーナル フリー

    目的:弁抵抗値(RES)は,流量に関わらず重症の大動脈弁狭窄(AS)を判別できることが過去の報告により明らかになっている.本研究の目的は,中等度以上のAS例において,RESを参照して,弁口面積(AVA)による重症度評価に対する心拍出量の影響を検討することである.

    方法:2000年2月から2012年6月に心エコー図検査を施行し,AVAが1.5 cm2以下であった連続990例(男性426例,75歳±10歳)を対象とした.回帰分析を用いてAVAとRESの関係,および心拍出量による影響を検討した.心拍出量の検討では一回拍出量係数(SVi)により2群に分けた(SVi>35 ml/m2をNormal Flow(NF)群,SVi≤35 ml/m2をLow Flow(LF)群).AVAによる重症ASの基準は1.0 cm2以下とし,RESによる基準は過去の研究結果から150 dyn·sec·cm−5以上とした.NF, LF群間で比較し,AVAの流量依存性とAVAによる重症度評価の妥当性を検討した.

    結果:AVAとRESは反比例関係にあり,RESが上昇するほどAVAが低下した.LF群では,NF群と比較して回帰曲線は下方に偏位していた.RES 150 dyn·sec·cm−5に相当するAVAは,NF群では0.86 cm2であったが,LF群では0.76 cm2と小さかった.RESを基準とするとAVAにより重症度を過大評価された症例が16%存在していたが,LFの症例に限るとその比率は22%に上った.

    結語:低流量はAVAによるASの重症度評価を過大評価させる大きな要因であり,心エコー図検査を用いた評価に大きな影響を及ぼしていることを認識すべきである.ASの重症度評価には,AVAの計測のみならず心拍出量の計測結果を加味することが重症度の判断に重要であると考えられる.

若手研究奨励賞―研究
  • 福田 友美, 村上 千里, 長谷川 智, 野呂 恵子, 平方 奈津子, 佐藤 正幸, 山本 義也
    2017 年 42 巻 1 号 p. 54-64
    発行日: 2017/02/01
    公開日: 2017/03/02
    ジャーナル フリー

    はじめに:肝癌肉眼分類は生物学的悪性度を反映し,治療方針を決定する上で重要である.今回我々は当院における肝癌切除例での肉眼型について,造影超音波(以下CEUS)による術前評価と病理所見の比較を行い,一致率および肉眼分類診断結果と再発までの期間,予後との関連について検討したので報告する.

    対象と方法:2007年8月~2014年7月に外科的肝切除術を施行した原発性肝癌68例(71結節)を対象とし,腫瘍部と非腫瘍部の境界が明瞭になるCEUS後血管相での超音波像を重視し,後血管相における造影欠損像により腫瘍輪郭,境界,形状等を観察し視覚的に肉眼分類を評価した.判定は臨床医とともに行い,肝癌取扱い規約に従い単純結節型(SN),単純結節周囲増殖型(SNEG),多結節癒合型(CMN)に分類した.術後病理診断との比較で術前画像診断の一致率を算出し,術後の無再発期間,生存期間についても検討した.

    結果:CEUSにおいて形状判定した71結節の病理診断内訳はSN23例,SNEG20例,CMN24例,その他4例であった.CEUSでの形状判定一致率はSN71%,SNEG69%,CMN85%であり,他の画像診断による一致率と比較しても劣らない結果を示した.肝癌肉眼型別に見た術後無再発,生存期間評価では,SN群で非SN群よりも無再発期間が長く生存率も高い傾向を示した.

    考察:治療方針を決定する上で,CEUS後血管相での形状判定ではSNか非SNかを鑑別することが重要であると考えられ,脈管浸潤や肝内転移の割合が多いとされるSNEGやCMN等における生物学的悪性度の高さを認識できた.予後に関連した境界線としてSNを正しく拾い上げることで,臨床医が求める治療適応決定の際の一助となることが期待される.

    結語:肝癌肉眼分類診断において造影超音波検査は有用な検査法の一つであり,単純結節型か非単純結節型かの正しい鑑別が再発や予後に影響を与える因子の一つであることを意識した詳細な形状判定および肉眼分類により,肝癌の治療方針決定に寄与できる可能性が示唆された.

症例報告
  • 小畠 尚子, 成田 由佳, 林 ルミ, 小田原 恵子, 沖中 英紀, 堀田 寛之, 杉木 孝司, 岩崎 沙里, 柴田 真吾, 湯田 聡
    2017 年 42 巻 1 号 p. 65-71
    発行日: 2017/02/01
    公開日: 2017/03/02
    ジャーナル フリー

    症例は80歳代男性.近医で心房細動と心不全を経過観察中,経胸壁心エコー検査(TTE)にて左房内に腫瘤を認め,精査目的に当院へ紹介となった.当院初診時のTTEにて辺縁平滑,有茎性で可動性を有し,心房中隔に付着する塊状の腫瘤(21×13 mm)を認め,左房粘液腫を疑った.腫瘤摘出術待機中に右橈骨動脈への塞栓症を認め入院となった.初回TTEから18日後にTTEを再検したところ,腫瘤は29×19 mmに増大し,辺縁の輝度は上昇,内部は低輝度となり,性状の変化を認めた.コンピューター断層撮影法で明らかな腫瘍やリンパ節腫大を認めず,原発性心臓腫瘍の可能性が高いと判断した.可動性を有し塞栓症を発症したことから,初回TTEから33日目に腫瘤摘出術を施行した.手術にて細い茎を介して心房中隔と繋がる表面平滑,楕円形の腫瘤(40×15×14 mm)が摘出された.病理組織所見では腫瘤の大部分は壊死組織であり,心房中隔と繋がる茎の近傍に粘液腫を示唆する所見をわずかに認めた.TTEで認めた腫瘤内部の経時的な性状の変化は,粘液腫内部が壊死に陥ったことによるものと考えられた.血栓は腫瘤の表層部に限局しており,TTEで認めた腫瘤辺縁の輝度上昇は,器質化した血栓を反映したものと考えられた.経時的に施行したTTEにより,腫瘤内部の壊死に伴う左房粘液腫の性状の変化を観察することができた1例を経験した.

  • 小沼 清治, 須田 祥太, 長堀 未央, 後藤 明香, 石塚 愛, 鈴木 菜央, 鈴木 寿江, 上村 明好, 原 健, 西嶋 由貴子
    2017 年 42 巻 1 号 p. 72-77
    発行日: 2017/02/01
    公開日: 2017/03/02
    ジャーナル フリー

    今回我々は,腎細胞癌術後長期経過12年で甲状腺へ単独転移と診断された1例を経験した.女性45歳時平成7年に当院で左根治的腎摘出術施行され経過観察されていたが,平成16年8月に左頸部にしこりを自覚し腺腫様甲状腺腫が疑われ1年後フォローとなるも来院せず.平成19年11月に再検査の際には著しく増大し,左内頸静脈に甲状腺腫瘤より直接浸潤する腫瘍像へと変化したことより転移が考えられた.

    甲状腺腫瘤は比較的女性に多い症例であるが長期経過であっても腎癌の既往のある場合にはこのことを念頭に走査する必要があると思われた.

地方会抄録
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