抄録
本研究は、日本における伝統的な「包み」の文化を取りあげ、その特質について論考したものである。本稿においては、『万葉集』における「つつみ」の概念の広がりに着目し、日本の「包み」の文化の本来的意義を明らかにすることを目的とした。『万葉集』より、可能な限り、「つつみ」に関連する言葉を抽出し、それらを体系的に整理・分類した。「包むもの」と「包まれるもの」の関係に注目し、「つつみ」に関連する言葉(用語)を整理・分類を行った。その結果、「つつみ」は、大きく、「用具のつつみ」「身体のつつみ」「空間のつつみ」「こころのつつみ」の四つの概念に分類された。「包むもの」と「包まれるもの」との間には強い相関関係があり、その関係のなかから特定の意味が生み出されていたことがわかった。万葉時代の「つつみ」の文化を概観すると、人を取り巻くおよそ全ての事象に対して「つつみ」の概念が関わっており、具体的な行為が、「もの」から「こころ」にまでおよぶという点で「つつむ」ことは、日本の文化を形成する要素として最も重要なもののひとつだったといえる。