抄録
音楽行為の中での演奏は、すでに作曲された音楽を再現するといった要素や、即興演奏のように新たに音楽を生み出すといった要素があるが、これらを実現するためには、音楽的構造の知識と、表現するための技術が必要不可欠である。これらの知識と技術の習熟には多くの時間を必要とし、知識や技術を基盤として、自己表現のレベルで「演奏」を行うことができる人は少数である。自己表現のレベルで「演奏」を習熟するためには、ユーザ自らが体験的に試行錯誤しながら知識と技術を身につけ、さらに、自分なりのルールを確立するプロセスが重要であると考えられる。そこで、鉄琴の演奏と文字入力の言葉の組み合わせを視覚的に表現するインスタレーション作品「言琴 - cotocoto」を制作し、実際にユーザに体験してもらうことによって、これらのプロセスの重要性の検証を行った。その結果、ユーザが試行錯誤を繰り返すことによって、作品の中でのルールを発見していくプロセスを実現できた。