抄録
形態認知における「類似性」は,対象間の照合や弁別の基本的な手掛かりとなる重要な心理特性である.また,ヒトの認知は文脈に応じて柔軟に変化する過程であるため,「類似性」認知構造に影響を及ぼす個人や環境の要因,「場」を考慮した「類似性」認知構造の解析を本研究の目的とした.はじめに,解析手法の選定を行い,INDSCALモデルの多次元尺度法が適していることを確認した.つぎに,「場」として大域特徴処理および局所特徴処理と密接な関連性がある提示時間と提示サイズをとりあげ,それらを操作した認知実験を行った.そして,INDSCALモデルを用いた解析により,瞬間視では「複雑さ」,持続視では「ボリューム」が主要な形状特徴として抽出された.さらに,「複雑さ」は提示時間の影響を受けやすく提示サイズの影響を受けにくいこと,「ボリューム」は両要因の影響を受けにくいことが確認された.瞬間視においては大域的特徴処理が優先されることで「複雑さ」の局所的な特徴が認知されず,持続視に比べて相対的に類似度の平均が高くなる傾向が確認された.以上より,「場」を考慮した「類似性」認知構造の解明に向けた知見を得ることができた.