抄録
認知における全体と部分の関連性については,認知科学のルーツの1つであるゲシュタルト心理学において述べられている.ゲシュタルト心理学者は,「全体は部分の総和以上のものである」として全体の優位性を主張しており,ヒトの認知が要素には還元できない全体的な枠組みにより規定されると指摘している.しかし,ゲシュタルト心理学で述べられた全体と部分の関連性には定性的な知見が多く,ヒトが抱くイメージや印象などに対応するマクロ情報(全体)をミクロ情報(部分)からどのように算出すれば良いのか,という課題に対しては十分な知見が得られていない.そこで本研究では,「場」と「境界」の概念を導入することで,マクロ情報の定式化およびマクロ情報(全体)とミクロ情報(部分)の関連性解明を図る学問「マクロ感性科学」の概念を述べる.そして,形の「複雑さ」というマクロ情報に対応するマクロ情報の定式化研究および応用事例を紹介し,そこで抽出された課題と,定式化におけるマクロ感性科学の重要性について言及する.